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八重山のわかれ道

八重山のわかれ道

米原リゾート問題について

                                     ’07.6.24
                                    SAVE YONEHARA           

                                     
米原の現状

 石垣島北西部米原地区は、今年8月に国立公園の特別保護地区になる桴海於茂登岳と海中公園地区になるサンゴ礁に挟まれた東西にのびる狭隘地で、その特有の地形、地質により多種の天然記念物やレッドデータ・ブック記載の生き物を含む多様な生態系が広がっています。
生物種の多様性により、環境省の選定した『日本の重要湿地500』に選ばれ、沖縄県の定めた『自然環境の保全に関する指針』では,
陸域を「自然環境の保護・保全を図る区域」、
海域を「自然環境の厳正な保護を図る区域」とされています。
 その自然環境の健全さと、それに基づく景観により、広く市民の憩いの場であるとともに、多くの観光客の訪れる場所となっています。
 数年前に県道とビーチに挟まれた一帯が切り開かれ宅地分譲されました。そして一昨年、大和ハウスによる米原リゾート計画が持ち上がりました。共同事業者である興ハウジングとそのダミー会社と思われる農業生産法人(有)青葉農園は、他にも広く土地を所有しており、乱開発が懸念される地区です。 


これまでの経緯           

 ’04年11月、事業者から石垣市に対しリゾート開発の事前相談があり、市は開発調整会議を設け庁内関係各部署に照会をしました。
 同年12月に米原公民館が地区住民を対象としたリゾート開発の是非に関するアンケートを実施しました。結果は賛成12、反対42で、これを受けて「開発同意書に公民館長印は押印しない」と決定しました。
 ’05年6月、事業説明会が開かれ、開発計画は初めて住民の知るところとなりました。開発面積7万5千平方メートル、13階建て45mで330室660名収容という離島最大規模のもので、10月着工とのことでした。
 7月には反対住民が中心となり、石垣市長に対し米原地区内で集められた過半数を超える反対署名とともに意見書を提出しました。事業者に対しても意見書を提出しました。
 同月、初めて大和ハウス、大和リゾートも出席した事業説明会が開かれ、大和ハウスの担当者は
「地域の方の反対があれば無理には開発できない」
「ボタンの掛け違いがあった」
としながらも引き続き事業を進めると述べました。
 後に判ったことですが、8月22日付けで米原公民館長の叔父が興ハウジングの農地所有のためのダミー会社と思われる農業生産法人(有)青葉農園の代表取締役に就任しました。
 22日に開かれた事業説明会では改めて13階建ての計画が示され、事業者側の要望により住民は代表者会を設けて話し合いを続けることになりました。その方法は住民が質問・要望を文書で出し、事業者がそれに答える形で回を重ね、それが尽きた時点で住民全体で賛否の決を採るというものでした。
 11月に開かれる予定であった事業者と代表者会の初の会合では、事前の取り決めに反し米原住民の傍聴が認められず、続いて傍聴を求めて集まった市民の傍聴も認められなかったため騒動になり、流会にされました。
 12月に開かれた事業者と代表者会との会合で事業者側は計画を見直すと述べ、第1回目の質問・要望に対する回答を出すとともに、環境調査報告書を提出しました。
 ’06年に入って1月に反対住民の会、赤土監視ネットワーク、反対ネットワークの3団体は事業者が提出した環境調査報告書の引用データに改ざんがあることに対し、大和ハウスの本社に抗議に行きました。
 2月の事業説明会では見直し案として5階建て4棟、200室の案を提示し、縮小と報じられました。しかし実際には、開発面積は1万平方メートル近くも拡大しています。
 その後、1年半近く、今日に至るまで、住民に対する一切の事業説明会は開かれていません。
 昨年末に農振除外案が公告に付されましたが、当リゾート予定地内の6筆が含まれています。後述しますが、この農振除外には問題点が多く、私たちは市に対し異議申出をしましたが申出権限がないとして却下されました。続いて県に対し不服審査を申し立てましたが、同様の理由により却下されました。


計画の問題点

 先述のとおり、米原周辺は生物種の多様さにおいて特筆すべき特徴があります。
 ここで大規模開発を行うということは、森と海とのつながりを寸断し、そこに生きる貴重な生き物たちの命を奪うということです。
 桴海於茂登岳に降り注いだ雨は、その大半が地中を伏流しつつ栄養塩類をサンゴ礁の海へと運んでいます。残りの僅かが佐久田川、大田川といった細い流れとなって海へと流れ込んでいます。この流れは海と川とを行き来する生き物にとっては貴重な棲家です。しかし事業者は地下水を汲み上げ、排水を佐久田川へ流すと述べています。サンゴに栄養を運ぶ地下水を大量に汲み上げ、塩素処理された排水を大量に小川に流す、このことが米原のサンゴ礁に、山に、川に生きるものたちに影響を与えないはずはないでしょう。
 これまで市民や観光客は、ビーチや海上から見上げる桴海於茂登岳の勇壮な景観、県道から眺める紺碧の海といった風景を共有してきました。しかし、そのような風景がこのリゾートによって独り占めされようとしています。ビーチや海上からはリゾートを見上げることになり、県道からもリゾートを眺めることになります。
 石垣市の最大の観光資源は自然環境とそれに基づく風景です。それらを失うことは基幹産業である観光産業の芽を摘んでしまうことに外なりません。


事業者の手口

 この計画を進めようとしているのは、大和ハウス工業(株)、大和リゾート(株)、予定地内の原野等を所有している(有)興ハウジング、同社の農地所有のためのダミー会社と思われ、予定地内の農地を所有している農業生産法人(有)青葉農園です。

 彼らは、当初より事業説明の対象を米原地区住民のみとし、さらに代表者に絞りました。「地元」を小さく限定すればするほど反対の声を押さえ込むのは容易ですし、地元の合意があるとなれば、外の地域の人は反対と言い辛いものです。さらに代表者に絞り込めば気がつく問題点は格段に少なくなるでしょうし、代表が決めたこととなれば地区内の人でもモノを言い辛くなります。
 また、当初は、自由な話し合いの妨げになるとして録音は禁じられ、マスコミの取材も排除されていました。こうして「話し合い」は事業者側に有利なように仕組まれているのです。
 このように企業が反対の声を押さえ込むために『住民対策マニュアル』まで用意している例もあるということを、住民運動のハウツー本で知った私たちは、この本から企業の手口を抜粋して住民に注意を促しました。すると、大和ハウス工業、大和リゾートは文書偽造であり名誉毀損に当たるとして回収と謝罪を内容証明郵便で要求してきました。

これより以前「ここに大規模リゾート?」「海は大丈夫?」「島人の宝ってなに?」といった可愛いイラスト入りの看板が立てられたことがありましたが、一夜の内に何者かに持ち去られました。開発を望むものにとって、この問題について考えること自体が許せないのだと思い知らされた一件でした。
 先述のとおり、計画が持ち上がった後に、公民館長の叔父が青葉農園の代表に据えられたのも同じような理由でしょう。沖縄総合事務局が国としては、青葉農園には営農実態がないので、大臣転用になった場合には農地転用を認めない方針を示したことも一因かもしれません。

 大和ハウス工業と興ハウジングから市に提出され、後に代表者会にも提出された『環境調査報告書』は現地調査が3日間、海域の現地調査なしと内容が希薄です。
その上、サンゴについての文献調査では、引用した文献からサンゴの被覆度や生存度を抜き出す際に、数字だけ過少に書き換えられたデータの改ざんがあります。明らかに改ざんされているのに、またもや大和ハウス工業と大和リゾートは、改ざんなど無いと強弁し、法的手段に訴えるという内容証明郵便を送りつけてきました。
これに対し私たちは、この改ざんを検証した文書を送り釈明を求めましたが、1年以上経った今でも回答はありません。

質問・要望についても同様で、1回目の約300項目にわたる質問・要望を勝手に約80項目に取りまとめて回答してきました。しかも、その多くが「検討します」などとコピーして貼り付けるという全く誠意のないものでした。
2回目の質問・要望に対しては1年半近く経った今でも回答はありません。

また、大和と関係のある鮫島明人なる人物が米原住民を装って運営している『米原地区ニュース』なるサイトがインターネット上にあります。そのサイトには「米原地区にはウミガメはあがりません」、「サンゴの状態は極めて良くなく・・・」、「石垣島米原地区。ごく普通の地域です」、カンムリワシは「米原地区には住んでいないことが環境調査会社の調べで確定しています」などと書かれています。
そして、このリゾート計画に反対している者たちがいかにも怪しい団体であり、共に反対活動をすれば大変なことになる。まして反対の署名などしたら、個人情報が漏れ不利益を被るといったようなことが書かれています。
さらに『米原の経済的自立と自然との共生をめざす会』なるものが大和ハウスに対し999項目の要求をしたとされ、この方法が米原の将来を良くするのだとの主張が為されています。もちろん、この会の存在も999項目の要求の存在も確認されていません。

また、先だって、1年数ヶ月ぶりに開かれた代表者会において、青葉農園の社長がこのようなことを口にしました。「大和ハウス工業の環境調査をしたダイビング業者に反対派が3、40名で殴りこみ警察沙汰を起こした。そんなことが3回も4回もある」と。
もちろん、このような事実は一切ありません。

そして、農政課に出した農振除外の書類には青葉農園所有の土地を興ハウジング所有と偽ってあります。

’06年2月の事業説明会で大和ハウスは『3つの挑戦』として、「自然共生への挑戦」、「コンセプト継続への挑戦」、「情報提供への挑戦」を掲げましたが、それから約1年半、彼らのしたことといえば、「環境調査と称してサンゴに鉄筋を打ち込み、そのまま放置するという自然環境への挑戦」、「自分たちの利益のためにデマを並べて地域の分断に勤しむ反社会的なコンセプトの継続」、「地元住民や都計課に対する説明さえ放棄して、農政課には虚偽文書の情報提供、あるいは『米原地区ニュース』なる虚偽満載ニュースの発信」といったことに終始しています。


行政の問題点

 石垣市では、’05年より風景づくり条例、風景計画、改正自然環境保全条例を策定し、本年6月より施行しました。この取り組みは大いに評価できるものと考えますが、その一方で旧景観形成条例、旧自然環境保全条例が十分に活用されてこなかったことは省みる必要があります。
 市長は、度々、これら条例に定める指導、勧告は強制力がなく、建築基準法さえクリアすれば建築は可能であると述べてきました。しかし強制力がないからといって指導、勧告をしないのであれば、条例を十分に活用しているとは言えません。また、強制力がないことは新しい条例でも同様ですから、今後も行政が不適切な運用をするのであれば何も解決しません。
 実際、市は吉原の7階建てマンション、崎枝の6階建てマンションに関して開発同意申請に不同意としていますが、市長は、なぜか大和ハウスの米原リゾート計画に関してだけ、開発同意申請も出されない内から「開発に基本的に賛成する」と繰り返し公言しています。
 また、市長は二言目には「企業の利益を無視するわけにはいかない」ですとか、「地域の活性化のため」云々と述べてきました。自分たちの島の未来を無視してまで島外企業の利益を考慮してやる必要はありませんし、大規模リゾートができたからといって地域の活性化に繋がると言えないことは、もはや常識と言って良いのではないでしょうか。
 また、’06年に公開質問に答えて「石垣島の自然環境は日本最南端の自然文化都市を標榜する本市のかけがえのない財産であります。私たちは、共有財産であるこれらの良好な自然の保全、再生に努め、次世代へ引き継ぐ責務があります。したがいまして、今後も人や地域を限定することなく全体の問題として考えてまいります。」と述べていたにもかかわらず、当リゾート開発計画のための農振除外については後述しますように不正とも言える手段で除外し、異議申出に対しては申出権限がないとして却下しています。

 農振除外の手続きは、当リゾート計画に対して市が行った最初の公式な手続きです。リゾート開発を目的としての農振除外ですから、市は米原での大規模リゾート開発を容認する姿勢を示したということです。

 農振除外に関して市は県と事前協議を行っているのですが、その中で県は以下の問題点を指摘していました。
1.計画に反対している住民がおり、反対運動が起こっているため地元の合意形成が図られたとは言い難いこと。
2.事業者側も地元を説得するため計画を変更しており、また現在も地元の合意を得るため計画の見直し中であることから、プランの実現性は現時点では低いこと。
3.事業者側から2月に提示された見直しプランで今回除外申請があがっている箇所は、「ビオトープ」等の用地となっている。ビオトープが直接リゾートに関係する施設とは言い難いこと。
等から除外は時期尚早であるとの支庁の考え方を説明したということです。

 これに対し市は、公民館長他数名で決定した「農振除外に対する賛成」をもって「開発賛成」は地元の総意であると県に伝えました。
’06年2月の事業説明会以降に計画が変更されているようですが、米原地区の住民はその計画の説明さえ受けていません。どんな計画かも分からないのに合意のしようがありませんし、当然、諮られたこともありません。
 当リゾート計画地は石垣市風景計画において7mないし10mの高さ基準が設けられており、現在の20mという計画案では、市は同意できないはずです。したがってプランの実現性は低いと言わざるをえません。
 事業者は、農振地、すなわちビオトープ用地に駐車場を持ってきたようですが、場所を入れ替えただけで実現性が上がることはないでしょう。
 また、都計課に対し開発同意申請が出されていないのみならず、一年半近く連絡もないということですが、農政課は「開発許可申請も出ている」と誤った情報を県に伝え、たった一枚の平面図をもって具体的な計画があるとしています。
 その上、申出書の「所有者」「利用者」の欄とも(株)興ハウジングと記入されていますが、実際はこの農振地6筆の内、5筆の所有者は(有)青葉農園です。面積にして約90%になります。
 私たちは以上のような間違いを指摘しましたが、間違いを間違いと認めず強行するのであれば、これはもはや間違いではなく不正です。

 農振除外の手続きは、これから本協議の場へと移されますが、当リゾート計画への対処いかんによって、石垣市の未来を大きく左右することを市と県が認識し、適切な対処をすることを望みます。

                                  
                                        以上


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